孤独のビビッド。

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私たちの出会いは、数年前。
彼女の骨髄異形成症候群という難病の闘病記に、私が、写真を撮り下ろすことになったのが、きっかけ。
そして今日、再会を果たした場所は、奇しくも、病院。
葉っぱだらけになった、瑞々しい桜が見える病室。
ロビーの片隅にある、ちっちゃな喫茶コーナー。
私たちは、そこで、久しぶりにたくさんの話をした。

帰り際。
"せっかちだから、エレベーターは待てない"という彼女と一緒に、非常用の階段をゆっくり降りる。
途中、射し込む夕陽が、とても美しく場面を際立たせたから、私は、すぐさまシャッターを切った。
この写真は、その柔らかなオレンジの光が映し出した、私たちの肖像。
何の違いもない、同じ濃度、二人の影。

「孤独とともにあるときのみ、人は自分自身を見いだすことができます。孤独とはよき友のことです。」
「私の建築は、孤独を恐れたり避けたりする人のためのものではありません。」
これは、彼女が大好きなメキシコの建築家、ルイス・バラガンの遺した言葉。
鮮やかな色彩を操る人物が表現する、"孤独"という言葉が、すごくしっくり、私に着地して。
かつて、孤独までも友だちにしてしまえばいいんだと、言ってた自分を思い出した。
そして、なんだか力が抜けた。

これからもまだ、彼女は、病気と闘う日々を送る。
頑張れなんて、安い言葉は贈らない。
孤高の勇敢な友に、私は、穏やかなる毎日を、ただ祈る。

「結局、何もあっちには持ってけないんだよね、思い出すらも。」
「だから、生きてるうちに何を遺せるか、そういうこと。」
二人で、"本日のまとめ"みたく話したことを、私は、何度も反芻した。


⇒これまでの写真とことば



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死なない気がするなんてのは、結局、妄想でしかなく。
間違いなく、私もいつか、死にます。
日常では、そのイメージが思う以上に遠くに存在してて、
まさか、次の瞬間に余命を宣告されるなんて、全く予想もしてないわけで。
・・・ところが、ある日、彼女は突然に余命5年の宣告を受けました。
闘病の日々。
どうして自分だけがこんな目に?
そんな葛藤の中、彼女は一度、崩壊してしまった世界の再構築を試みたのでした。
詩を書くという行為によって。

世界って、人生って、こういうもんなんだろうなと
悟ったつもりで生きてきたのに、それが一気に崩れ去ったとき。
本当の本当に命には、終わりがあるんだと、知らしめられたとき。
一体、私はどういうアクションを自分に対して、また外側に対して起こすのだろうか?
自分を死なせないために何をするのだろうか?
そういった質問を、私は、私に投げかけ、足場を確かめるように、写真を撮り始めました。
いつもと変わらず動く世の中に、違和感を覚えながら、自身との語りの中。
私は、現実と嘘のはざまを漂いながら、シャッターを切っていた気がします。
目に映るものの鮮やかで、儚なくて。

「死」を意識しながら、闘った彼女の、その目を通して見た、世界に際立つ「生」。
それが、とてつもなく生々しくて。
私は自己を、省みます。
本当に、私は生きることを動詞できているのかって。

生きることを、もう一度考えるために。
ご覧いただければ、幸いです。

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by makisaegusa | 2011-05-02 23:55 | Photo+Kotoba-写真+ことば | Trackback | Comments(2)
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Commented by TAKA at 2011-05-04 00:59 x
当然世界に自分と同じ人はいないわけだけど、
みんなに共通するものがありすぎるから、
かえってその違いが強調されるよね。

だけどその違いを意図的に強調することって人間にしかできないし、
まさしく人間らしく「生きる」ということの本質だと思う。

彼女のことは知らないけれども、
彼女らしく生きていることに親近感と希望を感じるし、尊敬します。
Commented by makisaegusa at 2011-05-04 17:25
>TAKA

うん、そうだね。
同じと違うが、上手い具合に重なって人間て出来てる。
そして、その誰にも同じ部分が、きっと、みんなにとって「生きる」のコンセプトなんだろうな。
本質とコンセプトのシンクロが、人間なのでアール論。笑

彼女には、エスペランサハフュッフェンくんを贈りました。
あ!タカサンちにももうすぐ送るからねー!
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