ボタンを付け替える夜。

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恩師の訃報を知った夜。
私は、おばあちゃんから譲り受けたジャケットのボタンを付け替えながら、なんて愛おしい作業なんだろうかと、しみじみ思った。
以前にも付け替えた跡の見える、糸の始末のやり方に、おばあちゃんの性格が見て取れて、"こんなとこまで、らしいなあ"と、じんわり幸福感。
取れかけたボタンのところ、切れかけた糸をそっと切って、糸を抜き取って、また新しい糸でボタンを縫い付ける。
本来の糸色ではなかったであろう、白糸の名残をどこかに残したくて、布地には不似合いだと知りつつも、私は、また白糸を使うことにした。
同じモノに、同じく愛着を持つ不変の想いと、おばあちゃんから私までのタイムラグとの巡り合わせが、時を越えた合作のようで嬉しくて。

一方向にしか流れない時間の中、こうして手直しをしながら、モノが時を経ていくように。
人は、バトンを渡すように、人生を次の世代に引き継ぎ、時代は続く。
それらは意図せず、とても似通っていたから、私は、ボタンを付け替えることが、まるで大切なものを受け継いでいる儀式のように錯覚した。
幸運にも。

旅立つ前、最期に人がギフトするのは、来年も再来年も、残された人たちが、同じ時期、同じように集って、故人を懐かしむという出会いの贈り物。
私には、それがお互いの時間をシンクロさせ確かめ合う、始まりの行事のように見えて。
やっぱり、あったかいな、なんて思いながら、ボタンをゆっくりと付け替えていった、夜の出来事。
こんな風に、紡いで、繋がって、人は生きてく。きっと。
by makisaegusa | 2010-04-04 23:58 | Photo+Kotoba-写真+ことば | Trackback | Comments(2)
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Commented by POP-ID at 2010-04-08 13:06 x
リサイクルも大事だけど、そもそも継げばいいんだよね。心と共に。
Commented by makisaegusa at 2010-04-08 15:11
>POP-ID

ほんとにそうだ。
地球は、未来の人からの借り物だしね。
継ぐ、って、とても背筋がシャンとする言葉です。
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